小説講座2

次に情景(風景)描写について考えてみましょう。
情景描写とは、景色などの周辺情報のことです。
どこまで描写しなくちゃいけないのか迷う人も多いんじゃないかな。
一言で言えば「必要な分だけ書こう」なんですが、どれだけあれば十分で、どれだけ書くと余分なのか加減が難しいです。これはほとんど感覚なので。

とりあえず
・5W1Hが必要に応じてわかる程度に書こう!

ぶっちゃけ全然なくても話がわかればいいです。
ふたりの会話がメインであれば、二人のいる場所がカフェだろうが深夜の路上だろうがどうでも何でも良いのです。ただ、話しているシチュエーションが大切になってくる場合は状況の描写が必要です。

例:
「やあ、元気そうだね」
「誰? あんた」
「覚えてないの? 隣の部屋の田中だよ」


昼下がりの喫茶店。私は親友の真紀と二人で近所の喫茶店に来ていた。
「やあ、元気そうだね」
軽薄そうな男が隣の席にいきなり座る。
真紀も私も困惑するばかりで、顔を見合わせた。
「誰? あんた」
「覚えてないの? 隣の部屋の田中だよ」
ああ、昨日、アパートの隣室に引っ越してきたって挨拶しに来たっけ。顔を見たことある気がする。


深夜二時。
私は一人でバイト先から家に向かっていた。
「やあ、元気そうだね」
黒い帽子に黒いコート。全身黒で固めた男が道路の端に立って、私に声をかけてきた。
「誰? あんた」
「覚えてないの? 隣の部屋の田中だよ」
見たことない、知らないはずの男だった。
その男は私に向かって、銀に光るナイフを向けた。

同じ会話でも全然話の内容が違いますね。
状況をざっくりまとめてみましょう。


いつ:昼下がり
どこ:喫茶店で
だれ:隣に越してきた田中くんが
何に:私さんと真紀ちゃんに
どのように:なんか軽薄そうな感じで
どうした:突然話しかけてきた

田中くんは私さんに興味がありそうです。
一方私さんはどことなく迷惑そうにしていますね。
ラブコメの導入なんかに使えそうな雰囲気。
この後も緩やかに物語が進んでいく気配がします。


いつ:深夜二時
どこ:帰り道の道端
だれ:全身黒ずくめの知らない田中さん
何に:一人きりの私さんに
どのように:(特に描写無し)
どうした:突然ナイフを向けてきた

明らかに非常事態であることがわかります。
この後、私さんはどのように事件を回避するのか、或いは危害を加えられてしまうのか。
緊迫した雰囲気の物語になります。

このように、必要最低限の描写でもある程度状況を伝えることができるようになっています。
5W1Hを整理したとき、ここは確実に伝えたい!というポイントは少なくても描写を入れましょう。
タイミングは物語が大きく展開して行く前、理由がなければ1ページ以内くらいには描写をしておくと良いんじゃないかな。
迷ったときは一行目に全部ぶち込みましょう。
最初はそんなもんでいいです。
慣れてきたら情報を小出しにする技術を学ぼう。

逆にたくさん描写を盛り過ぎちゃってなかなか話が進まないよ~!ってパターンもあると思います。
(私は風景描写を盛るのが苦手なので、描写が多く書け過ぎちゃう場合の例はお出しできないです)

そういうときは、「主観にどれだけじっくり景色を見ていてほしいか」で考えるのがおすすめです。
一文の長さはスピード感です。
長ければ長いほどゆっくりと時間が進みます。
私の体感では、一つ物の描写をするのに三行あれば長い方かなと思います。(文庫本サイズ推定)
景色をゆっくり眺めながら歩いている観光客の視点であれば、もっと長くても良いかもしれません。
警察官に追われている怪盗目線では、周りの景色をゆっくり眺めている場合ではないですから、もっと短く済ませた方が良いかもしれません。
大体そんな感じ。

描写のくどい薄いは読者の好みなので、この辺りは読んだ人に聞いてみるのが一番良いと思います。

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