小説講座2

最後に心情描写に入ります。
人によって得意不得意分かれる描写ですね。
心の中で考えていること(モノローグといいます)をそのまま書いたり、行動や情景に対して感じた事を主観に投影したり、感情表現をしたりします。

私は一人称小説の地の文全てが心情描写だと思って書いています。(だから最後に持ってきました!)
行動にも情景にも主体の主観が投影されます。
なぜ主体がその行動を取るのか。
なぜその景色が綺麗に、或いは淀んで見えるのか。
なぜ目の前の相手が美しく見えるのか。
全部主観を通して見えているから。

キャラの視点になって考えてみよう!って言ったらそうなんだけど難しいよね。というわけで技術的に考えてみましょう。

・モノローグを書いてみよう
これは多分簡単なんじゃないかな~と思います。
全ての描写に繋げて書けるやつ。
こんなんいくつあってもええですからね。

行動描写のところで書いた焼き芋屋さんに行く文にモノローグを付け足してみましょう。

例:
僕の方に向かって焼き芋屋の車が近付いてきた。
焼き芋か。お腹空いたしちょうど良いかな。
財布を取り出し近付いた。
「お兄さん、ひとつちょうだい」
「はい、どうも」
ぱかりと割って、真っ白な湯気の沸き立つ黄金色のそれにがぶりとかじりつく。
うんめえ。体温まる。このまま家帰ろ。
僕はそのまま家の方へと足早に向かった。

ちょっとだけ文も足した。
これだけで主人公くんの人柄が何となく見えます。
心情描写のすごいところは、ちょっと加えるだけで状況も説明してくれるところです。
台詞やモノローグは、主体が自分の状況から自然に口にしているものなので、一番ダイレクトな状況が投影されます。(お腹空いたなとか外寒いなとか)

状況説明したいけど描写がくどいかな~ってときはモノローグを足すと良いです。描写より軽いし。

・比喩を入れてみよう
情景描写や人物描写をするときに、主体ならではの主観的な比喩表現を入れてみましょう。
比喩というのは何かに喩える表現のことです。
主体の個性や価値観、そのときの気分が反映されて心情描写っぽくなります。

例:
夏。青い空。白い雲。とっても晴れています。


今日の空はまるでソーダのように青く冴えていた。
ぷかぷか空に浮かぶ雲が綿飴みたいで美味しそう。うちにある綿あめ機、まだ使えたっけな?
良い天気。お日様は元気そう。私もがんばろう!


今日の空はインクでも零したみたいに真っ青だ。
ぼんやり眺めた雲は実家のアホ犬によく似ている。
皮肉かよってくらいに日はよく照っている。暑い。腕まくりをした。日光が肌に刺さっているようだ。

こんなところでしょうか。
①は天気に対して肯定的な印象です。
元気で可愛いちょっと食いしん坊な学生さんかな。
②はお天気に対して否定的。
憂鬱そう。外回りをしているサラリーマン風です。
比喩表現だけの効果ではないですが、だいぶ印象が違って見えると思います。
人の目を通すと同じものでも違って見えますね。

・動作で気持ちを表そう
似た語彙を表す言葉でも、使うワードによって違うニュアンスを表現することができます。
それを心情描写でやってみよう!ということです。
形容詞などを添えるとよりわかりやすくなります。

例:
僕は彼女を見た。

①僕は彼女をじいっと見つめた。
②僕は彼女をじろりと睨み付けた。
③僕は彼女をしげしげと眺めた。

これだけでだいぶ違います。
もうちょっと癖のある例も出しましょう。

例:僕は彼から鍵を貰った。

①僕は彼から鍵をひょいと取り上げた。
②僕は彼から鍵を強引に奪い去った。
③僕は彼から鍵を恐る恐る受け取った。

これはちょっと難しいかなと思います。
できたら試してみよう。中級者向けって感じかな。
語彙をたくさん知っている方が良いので類語辞典を片手に挑戦してみてください。
形容詞と動詞の組み合わせによって雰囲気が大きく変わって見えるので試行錯誤してみると面白い。

さて。
三人称視点で小説を書いているときには心情描写はどうすればいい?という質問がありました。
ここで一緒にお答えしておこうと思います。

基本的に一人称のときも三人称のときも心情描写の書き方に大きく違いはないと思っています。
三人称(AはBに~~をした。みたいな書き方)でもいきなり文章にAの視点で心情入れて良いです。
その際、誰の心情なのかはきちんと文脈からわかるようにはしておきましょう。
前後に心情の主体の人物が動作をしていると良いと思います。

例:
女は少年の手を掴んで走り出した。
早くこの子を安全なところへ連れて行かなければ。
彼女は少年を連れて物陰へと体を滑り込ませた。

三人称視点でも誰寄りの視点みたいなものはあると思いますので(主人公とかワトソン役とか)、できる限り主観は沿わせてあげるとわかりやすいです。
一場面で複数視点の心情が入るとごちゃつきやすい印象があるので気をつけてください。

読み手がわかれば正直何をしてもいいです。

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